最新鋭旅客機の中で一人娘が失踪。目撃者ゼロで何の手がかりもないまま、実は娘の搭乗記録が存在せず、全ては理性を失った母親カイル(ジョディ・フォスター)の妄想だったのでは・・?という方向に話が展開していきます。こうなってくると、観ている観客までもが「この映画はサスペンスではなく、異常心理を描いたパラノイア映画だったのでは・・?」とミスリードされてしまいます。観ている方は不安で落ち着きませんが、それこそがこの映画の真の狙いであり、一番力を入れたいポイントなので、仕方ありません。いざネタが割れてみると、れっきとしたテロリズムに絡んだ誘拐事件だったということが明かされるのですが、そうしてみるとこの映画は、たった一人でテロリストに立ち向かう女版ダイハードであり、しかも9.11以降の新たな視点を取り入れたテロ映画なのだということが分かります。もはや現代においては、主人公は『見えないテロリスト』と戦わなければならないし、一番の敵は助け合わなければならないはずの乗客の『無関心』だったのかもしれません。何よりもジョディ・フォスターの演技力に惑わされましたが、色々と考えさせられる異色サスペンスでした。
映画レビュー・感想
4週連続で興行成績トップを独走している人気映画「どろろ」を観てきました。手塚治虫の原作は以前読んだことがあり、かなりお気に入りの作品だったので、もともと観に行こうと思っていたのですが、ここまで人気が出てしまうとはちょっぴり予想外・・。「どろろ」の世界観はそこそこうまく表現できていたと思うのですが、そこまで人気を集める秘密は何なのか、逆にそっちが気になり始めてしまいました。若者に人気の若手俳優が勢ぞろいしたトレンディ・ドラマの延長として受けているのか、CGやアクションを多用した娯楽作品として受けてるのか・・。とはいえ、おどろおどろしい妖怪のシーンはあっさりとまとめて、お化け屋敷的なライトな楽しみを追求していたり、殺伐としたストーリーを補う形で、柴咲コウの絶妙の演技と存在感が明るい笑いをもたらしていたりと、全体的にバランス感覚に優れた作品ということは言えると思います。そして何より、手塚治虫の原作自体が『親が子を殺す時代』『恨みと復讐の連鎖』・・等々、現代に通じるテーマを数多く含んでいて、それが観る人の心にガツンと響く部分が一番大きかったのではないでしょうか?そう考えると手塚治虫偉大なり、と改めて思わされますね。
3/3から全国ロードショー公開される「蒼き狼 地果て海尽きるまで」のワールドプレミアへ行ってきました。舞台上にモンゴルの騎馬兵団が大集結してのオープニングも圧巻でしたが、何より角川春樹氏の本作にかける熱い思いと、「男のロマン」の実現化というストレートなメッセージ性がありありと伝わってくる、そんな舞台挨拶でした。チンギス・ハーンの話については、井上靖の「蒼き狼」の頃から読んでいるので、こちらもほぼ熟知していたのですが、知らない人が見ても非常に分かりやすく、一人の人間としてのチンギス・ハーンの心の葛藤に、誰しも感情移入できる内容になっていたと思います。ストーリーの運びや演出は至ってオーソドックスなものの、とにかく目を奪われるのが、広大なモンゴルの草原での騎馬戦のシーンや、エキストラ2万7000人を動員したというハーン即位式のシーン・・。へたにCGを使ってないだけに、「一体どうやって撮ったんだ!?」と純粋に度肝を抜かされます。話としては知っていても、今までこれだけのスケールで映像化した人はいなかったのだから、これはもう天晴れという他ありませんね。
スカパーのPPVにて視聴。公開当時一世を風靡した人気作品ですが、見終わってみると個人的には長丁場の割りに映画的な盛り上がりが特に感じられず、なんとなく終わってしまったという印象が強いです。トム・ハンクスの渋い演技や、オドレイ・トトゥの独特な存在感も堂に入っているし、観ているだけでパリやロンドンの名所めぐりができるという醍醐味はあるのですが、謎解きメインのお話だけに今ひとつスペクタクル感が足りない気がしました。(ジャン・レノの警部役もなんだか不完全燃焼・・)さんざん物議を醸した宗教論争ですが、ネタが割れてみると歴史を題材にした完全なるフィクションに過ぎないので、どうしてこれしきの事であれだけ騒ぎ立てたのか、またどうしてあれだけ映画の人気につながったのか、今となってはよく分かりません。テンプル騎士団にしても、マグダラのマリアにしても、全て世界史の教科書に出てくる範囲のお話なので、特に目新しい題材でもなく、これだったら「世界ふしぎ発見」を見ている方が10倍面白いかも・・。ところで、『聖杯』といえばインディ・ジョーンズ4の公開はいつになるんでしたっけ??
テレビや雑誌で話題になっているマリー・アントワネットを早速見に行きました。生誕250周年記念ということで作られたこの映画、ソフィア・コッポラ監督の独特の色彩感がすばらしくまるで素敵な絵画を見ているような気分になりました。マリーのドレスも彼女たちの食べる菓子も全て美しくうっとりしてしまいます。また、ゴージャスな生活を描いたものかと思えば、「世継ぎを残さなければ意味がない」という周りからのプレッシャーや義父の愛人に挨拶をしなければならない悔しさ。14歳のマリーにこんな経験をさせていいの?と心が痛く切なくなるもの悲しさが残ります。一切、庶民の生活が全く出てこないところも当時のマリーやベルサイユ宮殿の生活そのものだったのでしょう。有名な「パンがなければお菓子をたべればいいのに!」というセリフがなぜでてきたのか、なぜマリーが殺されなければなかったのか、考えさせられた映画でした。
先日ゴールデングローブ賞の外国語映画賞を受賞したことでも話題の「硫黄島からの手紙」を見てきました。太平洋のはるか彼方にぽっかりと浮かぶ荒涼とした孤島・硫黄島。戦略上の重要拠点であるこの島で、こんなに激しい戦闘が行われていたこと自体よく知らなかったのですが、圧倒的な映像力と、あくまで淡々としたリアルな描写から、戦場の極限状態が十分に伝わってきます。海を埋め尽くすアメリカ艦隊来襲のシーンはトロイさながらだったし、全編モノクロ調の色彩を使っていることが功を奏して、夜の白兵戦もくっきりとクリアに見え、まるで時代劇の立ち合いを見ているような不思議な迫力でした。渡辺謙の味のある演技も最高によかったのですが、この映画の中で誰よりも主役級の存在感を放っていたのは一兵卒を演じた二宮和也です。司令部で独り奮闘する渡辺謙とは対照的に、常に前線で危機また危機の連続に見舞われる二宮君の存在は、私たち観客を地獄の底まで付き合わせてくれる、キュートな水先案内人に他ならないのです。
アメコミ原作の映画化作品、「ファンタスティック・フォー」を見てみました。今や新たなアクション・ヒロインの座を欲しいままにしているジェシカ・アルバは本当にカッコいいし、炎に包まれて高速で空を飛び回る火の玉男・ヒューマン・トーチのVFXはまさに迫力満点。序盤は科学者でもある主人公たちが宇宙へ旅立つシーンから始まり、ヒーローものというより宇宙もののテイストが強かったのが意外でしたが、科学者としての自分と、ヒーローとしての自分・・。その2つの役割のはざ間でナチュラルに悩むヒーロー像が新鮮でした。目立ちたがり屋の弟・ジョニーの影響もあって、もはや正体を隠すどころか最初からバレバレなのも新しかったです。ところで、見終わってしばらくしてから気づいたのですが、この映画の主人公たちの持つ超能力(ゴム人間・透明人間・高速移動・超パワー)、Mr.インクレディブルのヒーロー一家が持つ能力と、ことごとくそっくりなのです。これは一体どういうことなのでしょうか・・?
筒井康隆原作の映画化作品「パプリカ」を観てきました。原作が荒唐無稽な至極のエンターテイメントだっただけに、あれをどこまで映像化できるのか?という点で興味がつきないこの作品でしたが、美麗なグラフィックに未来っぽいテクノサウンドが相まって、いい感じにパプリカ・ワールドを再現できていたと思います。何より夢の中なら誰よりもチャーミングで頼もしいパプリカのキャラクターが最高で、普段のクールな研究員・敦子との対比がすごくうまく出ていたと思います。原作との細かい相違点は色々とあると思うのですが、一番大きな違いは敦子とパプリカを全くの別人格として描いている点ではないでしょうか?小説を読んだときには感じなかったのですが、こうして見るとまるでクリィミーマミみたいな魔法少女の系譜としてのパプリカが、内面的に成長していく物語という風に捉えることもできるんですね・・。他人の夢に侵入するテロリストたちとの、深層心理下での手に汗握る攻防戦は、とにかく迫力満点です。
甘いラブストーリーかと思いきや、観客がスクリーンの中の主人公と一緒になって、ひたすら恋人たちの想い出の中をさまよう、というかなり変わった趣向のマインド・トリップ・ムービーでした。アイデアとしては面白いけど、伏線や仕掛けも多いのでかなり集中して観ないと意味が分からなくなるし、人間の汚い面もガンガン見せてくるので、バッド・トリップにはご用心・・といった感じの内容です。それにしても、恋人の記憶がなくなるというパターンは最近よくありがちですが、記憶がなくなる過程そのものを内的に描いた映画は珍しいのではないでしょうか?最初はごく衝動的に、嫌気がさした恋人の記憶を消してしまおうとする主人公でしたが、消え去れば消え去るほど失った想い出の美しさに気付き、それにすがりついていく・・。途中でやめようと思っても、記憶消去を依頼した医院のスタッフはとんでもなくいい加減なヤツらだし、結局最後に頼れるのは記憶の中の恋人ただ一人。それでも、記憶の残影でしかない恋人ときちんと対話して、一緒に逃避行を繰り広げる彼らの姿には不思議な感動すら覚えます。ひょっとしたら私たちにとって『恋愛』とは『記憶』そのものなんじゃないか・・?そんなことを考えさせてくれる深淵な映画でした。
今話題の映画「フラガール」、川崎チネチッタにでかけて見てまいりました。山形出身の私にとって、常磐ハワイアンセンターは知っていましたが、もともとの炭鉱業の終焉から町の再生を支えるために作られたものとは全く知りませんでした。しかし、オープニングで福島の炭鉱の様子が映され、かつてはこんな大きな山があったのかと思うだけで、すでに切なくなってしまいます。映画の中では、松雪泰子演じる東京から来たダンサーが、徐々に教師として素人をプロに変えていく有様がみごとに描かれ、それだけでも感動するのですが、主人公でありフラガールのリーダーでもある蒼井優、そしてその母・富士純子をふくめ、それぞれ3人の気の強い女性像がうまく描かれていて圧巻です。
10/14から公開予定の映画「アタゴオルは猫の森」の試写会に行ってきました。ハウスシチューのCM等でもおなじみの、猫のヒデヨシを主人公にした、ますむらひろしの漫画作品をフルCGで映画化したというこの作品・・。その独特なファンタジー世界をどんな風に映像化するのかも興味深々でしたが、物語の舞台となるアタゴオルやヨネザアド大陸といった地名が、harukaさんの故郷にもほど近い山形県の米沢市や愛宕山(あたごやま)を由来にしているというのだから、ますます気になります。この夏に訪れた山形の自然を思い出しながら、奇想天外な物語世界に浸ってみました。映画は年に一度のお祭りのシーンから始まり、石井竜也プロデュースのロック・ミュージックに合わせて、ヒデヨシを始めとした猫たちや人間たちが総出演で踊りまくる、というハイテンションのオープニングにまず圧倒されてしまいます。80分という短い時間に詰め込んだだけに、物語の説明や演出面など足りない点もいくつか感じましたが、この得も言われぬトリップ感覚と、ヒデヨシというキャラクターの持つ強烈な個性が原動力のこの作品、見終わった後に超ポジティブな気分にさせられること請け合いです。
前作ボーン・アイデンティティーに続いて、マット・デイモンが記憶を失った元CIA特殊エージェント「ジェイソン・ボーン」を演じるアクション・サスペンス。冒頭のインドの港町ゴアのシーンから、ナポリ、ベルリン、モスクワと世界中を駆け巡り、追いつ追われつの緻密な攻防劇を繰り広げます。CIAからは全く孤立して一匹狼となったボーンが、誰の支援もない状況でスパイ顔負けの活躍をしてしまうのがすごいところです。世界中の街に溶け込み、逃亡と情報収集を常に同時にやってのけるボーンにかかっては、どんな組織の追っ手も敵うものではないのですが、唯一自分と同じ種類の人間(殺し屋)と対峙したときだけは、瞬時に抜き差しならない緊迫感が走るから不思議です。ギリギリの命の綱渡りを繰り返しながらも、常に次の一手を忘れない積極的なボーンの行動力がほんとにカッコいいですね。たった独りでも「情報こそ力」ということを実感させてくれる、現代的なヒーロー像だと思います。せっかく新たな人生で手に入れたはずの恋人マリーが、あまりにあっさり死んでしまうのが衝撃的なこの作品ですが、ラストシーンでのボーンの行動を考えると、これこそが彼の宿命、因果応報の結果なのだと分かり、物語の輪が綺麗につながります。このままの緊迫感を持って3部作の完結編である次回作に期待したいと思います。
楽しみに見ていた下北サンデーズが1話分前倒しで再終回を向かえてしまい、心にぽっかり穴が空いていたところ、スカパーで同じく演劇っぽいノリのこの映画がやっていたので見てみました。下北サンデーズの最後の舞台がかなり面白そうな内容だったにも関わらず、ほとんど本編を見ることができなかったので、軽い消化不良状態になっていたのです。今公開中の「UDON」でも話題の本広克行監督が、佐々木蔵之介を始めとした劇団出身者を数多く集めて作ったこの作品、そもそも演劇として上演されていたものの映画化なのだそうです。それもそのはず、ストーリーはほとんどとある大学の部室(SF研)でのみ繰り広げられ、ギャグなのかSFなのか分からないゆるーいテンションで全編引っ張ります。タイムスリップの理論や伏線は結構緻密に練られているので、演劇的な一体感で世界観に巻き込むならありかもしれませんが、映画ならではの見せ方としては今一歩工夫が欲しかった気もします。ただ、ロケに使われた香川県の善通寺という町(銭湯と名画座しか行く所がない・・)の持つ気だるい雰囲気だけは、星新一も顔負けの異世界をかもし出していたと思います。
こちらもスターチャンネルで20周年特別版が放送されていたのを視聴しました。スピルバーグの映画は子供の頃にさんざん見ていたはずなのですが、この「E.T.」だけはギリギリ映画館に行けない年齢だったのか、最後までちゃんと見た記憶がありませんでした。ETとエリオット少年との最初の出会いのシーンからして、煌々と照らされる月の光が印象的で、有名な自転車に乗っての飛行シーンも、中盤とクライマックスで2度盛り込まれているなどサービス精神いっぱいの構成でした。そんな風に美しく雄弁な映像手法に比べて、物語の説明的なセリフが極端に少ないので、肝心なところは観客自身が考えて判断するしかありません。なぜあんなに弱っていたETが一気に回復を遂げたのか?なぜETとエリオット少年との間に不思議なシンクロ現象が起こっていたのか?・・等々、考え出すと謎が謎を呼び、きりがありません。子役時代の本当にかわいらしいドリュー・バリモアが見られるのも嬉しいポイントですが、宇宙人であるET以上に、ETを捕らえようと黙々と迫り来る大人たちの姿こそが、まるでエイリアンのように見えてしまうのが、さすがの演出と言わざるを得ませんね・・。
スティーヴン・キングの処女作を、若き日のブライアン・デ・パルマが映像化したホラー映画の伝説的作品。前に一度見たことはあったのですが、スカパーのスターチャンネルで深夜にやっていたので、ついつい最後まで見てしまいました。以前見たときには、思わせぶりなストーリーにばかり気を取られていた気がするのですが、改めて見てみてその映像的な斬新さにビックリ・・。特にキャリー完全覚醒後のシシー・スペイセクの渾身の演技と、画面分割を多用しためくるめくパニック描写は圧巻のひと言です。しかも、見どころはそんなホラーシーンだけにとどまらず、映画全編に渡って音と映像が一体となったマニアックな演出が満載なので目が離せません。最後にはとんでもない結末になると分かっていても、卒業パーティで幸せの絶頂にいるキャリーの心情を現した、目の回るようなダンスシーンなど、そのカメラワークに思わず酔いしれてしまうものです。それにしても、この時代(70年代)の若者は男も女もあんなにモジャモジャ・ヘアの人ばっかりだったんでしょうか・・?
風のまにまに号

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