社会現象までを巻き起こした人気漫画「DEATH NOTE」のゴールデンコンビ、小畑健と大場つぐみが、満を持して新たな作品を世に送り出しました。漫画家を志す少年二人を主人公にした新作は、その名も「バクマン。」。一風変わったタイトルですが、第一話に登場する『漫画家として成功する確率なんてバクチみたいなもんだ』というセリフに、その言葉の意味が現れているように思います。学年一の秀才・秋人(シュージン)に突然「一緒に漫画家にならないか」と誘われた主人公・最高(サイコー)は、しょせん博打だと開き直りながらも、『それでも宝くじを当てるよりは簡単だ』という冷静な分析から、秋人の誘いに乗ることにします。現代版「まんが道」のような地道な青春劇が始まるのかと思いきや、それぞれ絵とストーリーという才能に恵まれた優等生タイプの二人は、要領よく力作を仕上げて早くもジャンプ編集部への『持ち込み』に成功してしまいます。そこから始まる編集者を交えたリアルなやり取りこそが、この作品の真骨頂・・。漫画家予備軍の若者たちがどうやって連載にこぎ着けていくのか、実在するジャンプ編集部や、新人作家たちの登竜門的存在である「赤マルジャンプ」などを舞台に、読者アンケートの仕組みなどの裏話も交えて物語が進行していくので、虚実入り交じった臨場感が味わえるのです。
「DEATH NOTE」に負けず劣らず緻密な描写と長いセリフ回しは健在で、相変わらずパッと読み飛ばすのは難しい、密度の濃い内容となっていますが、漫画家を目指す人にとっては目からウロコ、またそうでない人にとっても漫画制作の舞台裏を垣間見れる興味深々の小ネタが満載です。漫画家としていち早く成功するためには回り道なんかしてられない・・。あくまでも現実志向ながら、夢に向かって一心に突き進む二人の姿は、一度でも漫画を描こうと思ったことがある人には、とりわけ強い共感を呼ぶのではないでしょうか?
作中の主人公たちと編集者との会話の中で、もう一ヶ所『バクチ』という表現が出てくる印象的なシーンがあります。「漫画家には二つのタイプがある。一つは心の赴くままに傑作を生み出し続ける天才タイプ。そしてもう一つは計算で世の中の流行を読み、ヒット作を探り当てるタイプだ。」やや不純な(?)動機で漫画家を志し、チームワークで作品を作り上げる主人公二人は、明らかに後者のタイプ。ところが、実際にはこちらの計算タイプの作家の方が、一発ヒットを当てる確率は低く、困難な道のりだというのです。
そんな主人公たちの前に、破天荒な天才タイプの若手作家・新妻エイジが、強力なライバルとして現れます。物心ついた頃からペンを握り、乱雑に散らかった部屋の中、常に奇声を発しながら描き続ける創作スタイルは、常軌を逸しているとしかいいようがありませんが、誰もが認める実力を持っているのは紛れもない事実・・。全くタイプの違うライバルとの直接対決から、この先目が離せないところですが、この『天才VS秀才』という構図、まるで「DEATH NOTE」での月とLのライバル対決とよく似たシチュエーションだと思いませんか?そう考えると、今後の展開に嫌でも期待が高まるというものです。
さらに言うと、絵とストーリーという役割分担でコンビを組む最高と秋人は、この作品の作者自身である小畑健と大場つぐみの生き写しと言っても過言ではないでしょう。ヒット作を生み出すそんな二人の実力作家の創作スタイルの秘密が、本作を通して次々に語られるというのも、見逃せないポイントだと思いますが、主人公コンビが著者二人の投影だとしたら、ライバルの新妻エイジは一体誰をイメージしているのでしょう?
もしかしたら、計算でヒットを生み出すベテラン作家の二人に対して、自分たちには理解不能な未知数の感性を持った、新世代の作家たちへの驚異を、新妻エイジというキャラクターに投影しているのかもしれません。(あるいは、そうあって欲しいという期待を込めて、若手作家にエールを送っているのかも・・)
そんなわけで、深読みしようと思えばいくらでも深読みできてしまうぐらいウンチクが詰まったこの作品(主人公・最高のおじが昔描いていた漫画「超ヒーロー伝説」が、大葉つぐみと同一人物と言われている某漫画家が、過去に連載していた某ヒーロー漫画とそっくりだったり・・)、コミックス第一弾は来年1/5に発売になるそうなので、まだ読んでいない方はぜひチェックしてみてはいかがでしょう?
風のまにまに号

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