「ジェイソン・ボーン」シリーズ3部作の完結編「ボーン・アルティメイタム」を観ました。いよいよボーンの失われた記憶の全てが明らかになる3作目、自らの記憶と陰謀の手がかりを追って新聞記者のロスと接触を図ったボーンは、ついにCIA組織との全面対決を迎えます。全体的にアクションの派手さは抑え気味といった印象を受けるのですが、相変わらず世界中の都市を転々とし、スタイリッシュに繰り広げられるアクション・シーンの数々は洗練されていて、観光映画としても楽しめる一級の見応え感じさせます。前半ではロンドンのウォタールー駅を舞台にした、雑踏と無数の監視カメラの包囲網を縫った緻密な攻防戦、中盤ではモロッコの迷路のような市街地を舞台に手に汗握る追いかけっこ、といった具合に手を変え品を変え、趣向を凝らした演出は見ていて飽きません。主人公ボーンの強さや身体能力も去ることながら、即座に情報を分析して決断できる、状況判断能力のすごさには、現代的で本物のかっこよさを感じますね・・。世界中の情報網を掌握し、組織化された人海戦術を誇るCIAも、高度に専門家された個人にはかなわない、という非常に現代的な様相を、『ジェイソン・ボーン』というヒーロー像が象徴しているような気がしてなりません。この映画を、そういった『組織VS個』という視点で見てみると、経営や組織学の延長として、より楽しめるかもしれませんね。
終盤ではいよいよボーン自身の過去が明らかになるのですが、そういった物語の核心と合わせて、ボーン自身の復讐者としての心境の変化といった側面も描き込まれているのが、本作の特徴ではないでしょうか?その心理を投影する鏡となるのが、ボーンの敵役として登場する数々の殺し屋たち・・。彼らがいずれも、その辺にいそうな『普通の兄ちゃん』といった身なりをしているのが、不気味といえば不気味なのですが、組織との連絡はメール一本で済ませて、直接話をすることはないし、よくよく見れば白人ではなく、多国籍な人種ばかりという点も気になります。
これは組織からしてみれば、任務が失敗した場合にはすぐに切り捨てられるような、都合のいいやり方なのかもしれません。そして、そんな殺し屋たちの実像は、殺人マシーンとして育てられたボーン自身の過去とオーバーラップするのです。息もつかせぬプロフェッショナル同士の戦闘という側面だけでなく、そういった悲しい殺し屋たちの心の対話といった雰囲気が、本作のアクション・シーンには漂っているような気がします。
そして、冷徹に復讐だけを遂行しているかに見えるボーンの心の支えとなる存在が、CIA本部のパメラ・ランディと、ボーンの過去を知るCIA要員ニッキー・パーソンズの2人。特にボーンに同情的なニッキーは、モロッコへの旅に同行することとなり、危険なミッションを手伝うことにもなるのですが、このシーンがある意味でこの映画の最大の見どころではないかと思います。前作の「ボーン・スプレマシー」で恋人のマリーを死なせてしまった無念のあるボーンが、窮地に陥ったニッキーを救うことができるのか・・?シリーズを通して観ている人ほど、このシーンの緊迫感がリアルに感じられるのではないでしょうか?
風のまにまに号

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