有栖川有栖の国名シリーズ最新作「モロッコ水晶の謎」を読みました。モロッコ仕込みの専属占い師を抱える、とある会社社長宅で行われたパーティの席上で突如発生した毒殺事件。毒物の出所ははっきりしているものの、被害者のグラスにピンポイントで毒を入れる機会は誰にもなかった・・!?普通に考えたらそんな不都合な状況で犯行に及ぶ者などいないのですが、占い嫌いの火村助教授がそんな出口の見えない難事件に、あっと驚く方法で一本の光明を見出します。他の収録作「助教授の身代金」と「ABCキラー」も、それぞれ身代金誘拐事件とアガサ・クリスティの「ABC殺人事件」の模倣犯をテーマとしているのですが、こういった推理小説じみた犯行が実際にはいかに実現困難か、といった例を分かりやすく説明しているのが面白いところ・・。この中編集に共通するテーマは、ひと言でいえば『不合理な犯行』ということに集約されると思うのですが、いずれの作品でも、どうして犯人がそんな非合理的な犯行手段に及んだのか?という不可思議を、極めて現代的な背景と絡めつつ、明快に解き明かしてくれます。熟達した叙述手法も去ることながら、犯人当てメインのエラリー・クイーンというよりは、シャーロック・ホームズものを読んでいるような語りの安心感がありますね。
風のまにまに号

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