ゴスロリ作家として知られる雨宮処凛の近著「生きさせろ! 難民化する若者たち」を読みました。雨宮処凛さんはちょうど昨日の参議院選挙直後のNEWS ZEROの深夜討論に出演していて、ワーキングプアや若者の貧困化についてカメラの前で訴えていたので、テレビでご覧になった方も多いかと思うのですが、彼女が伝えようとしていたことの重大さは、やはりこの本を読んでみないと実感として分からないのではないかと思います。私も少し前に高円寺で『ニート一揆』というのがあったとニュースに聞いたとき、「働かないのに権利を主張するなんて・・??」と月並みな感想しか持たなかったのですが、本書の中で彼女が取材した多くの若者たちの生の声を聞くに連れ、働いても貧困、非正規雇用をいいことに企業の都合で使い捨てられる若者たちの現実が浮き彫りにされます。そうして搾取され被害に遭っているのは、フリーターや派遣労働者に止まらず、正社員においても必要以上に残業を強いられたり、過労死しそうになるまで働かされたりと、『当たり前の生存の権利』を脅かされている若者が後を絶たない・・。と、ここまで聞かされると20~30代の若年層の方には、似たような境遇に思い当たる人が決して少なくないのではないでしょうか?
本書では、全国の工場を転々としながらギリギリの生活水準で働くことを余儀なくされているたくさんの若者フリーターたちの実態、またそうした不安定な雇用状態からふとしたはずみでドロップアウトしてしまい、ネットカフェ難民と化したり、生活保護や救済を求めて困窮する若者、一方で正社員でありながら不当な労働状況で酷使され過労死や過労自殺に至った人々など、克明な取材とインタビューによって現代の若者の置かれた現状を極めてリアルに伝えています。
若者の無知や社会的立場をいいことに平気で労働基準法を無視したり、偽装請負など組織的な違法行為がまかり通る企業側の倫理を糾弾しながらも、歪んだ『自己責任論』が蔓延している世間の雰囲気や、「自分の努力が足りない」とか「周りのみんなも頑張ってるから」とあきらめてしまう若者自身のマインドにも問題があると指摘しています。この本に書かれた事実を鑑みれば、決して今の社会の状況が若者のせいではなく、政府や日経連が意図的に仕組んだ規制緩和や労働者派遣法の改正などに端を発していることは明白だというのに・・。
実際に犠牲に遭われている方々のレポートは涙なしには読めないものがありますが、「我々は反撃を開始する」という一文で始まる本書はそれだけでは終わりません。フリーターのための労働組合「フリーター労組」を後ろ盾に、即日バイト先を解雇された友人と一緒に団体交渉に乗り込むシーンは胸踊らされるし、冒頭で触れた高円寺ニート組合の大規模デモパレードに自ら参加して浮かれ騒ぐ著者の描写は実に生き生きとしています。これらの記述を読むと「すでに改革ののろしは上がっているのだ」ということがサワヤカな実感として感じられることでしょう。
フリーターも派遣も正社員も関係なく、私たちを取り巻く雇用状況がとんでもない事態に脅かされていることには違いなく、それが社会的・構造的問題なのだと認識することが第一歩なのだと本書は教えてくれます。プレカリアート=不安定さを強いられた人々(不安定な労働者)という言葉に代表されるように、経済のグローバル化がもたらしたこのような状況は日本だけに止まらず、欧米などでは多くの若者がすでに立ち上がり反抗を開始していたり、より正当な権利を獲得していたりするのを、私たちもそろそろ学習するべきなのかもしれません。
実は雨宮処凛さんとはほぼ同い年ということもあるのですが、彼女のデビューのきっかけとなった初主演映画「新しい神様」を観に行ったときに、劇場で行われた公開記念トークを聞いたことがあって、それ以来妙に親近感を感じていました。この本の中でも雨宮さんは、就職氷河期を経た出口のないフリーター生活から自分が脱することができたきっかけが、この映画の出演に端を発する25歳の頃の作家デビューだと語っているので、私は彼女にとって非常に重要なターニングポイントに居合わせたことになります。25歳といえば、私もちょうど社会人として就職した時期に当たるのですが、果たして人間らしく自分らしく働いてこれたのかどうか、色々と考えさせられてしまいますね・・。
<関連サイト>
・雨宮処凛公式ホームページ
・すごい生き方 ブログ
風のまにまに号

私もこのルポを読んで実態を知って驚きました。また20代の時の自分の働き方を振り返ってもまさに、ワーキングプアだった、と考えさせられました。皆さんによんでもらいたい1冊です。