
NHKのアニメでは、今週から「復活編」の放送が始まった火の鳥ですが、様々な時代に舞台が移される原作の火の鳥シリーズでは、はじめに最も過去の時代の「黎明編」と、はるか未来の人類の終焉を描いた「末来編」が発表されて、その次にそれぞれ後に続く未来の話と過去の話を遡りながら交互に描いていく「サンドイッチ構造」で成り立っているそうです。全作品の発表された順序を図示すると上の図のようになります。
一番過去と、一番未来から始まって、徐々に真ん中の「現在」に向かって書き進められる。その意味では、最後に発表された「太陽編」の舞台が7世紀+21世紀の日本ということなので、作者の中では続編の構想はまだまだ先があって、未完の大作と言えそうです。
だから、シリーズ2話目の「末来編」にして、一番最後の人類の成れの果てまで描き切って、「火の鳥とは何か?」というタネ明かしまでしてしまっているのもすごいと思うのですが、ここでネタを明かしているからこそ、後はもう同じテーマを多彩なバリエーションで無限に掘り下げていくのみ、という安定した物語構造になっているのでしょう。そこに共通して込められているテーマは「生命とは何か?」「生命賛歌」といったものです。それにしても壮大なスケールですよね・・。
実は、子供の頃はなんだか話が怖すぎてまともに読めないでいたのですが、私もこれを期に原作を1冊づつ読み直しているところなので、そちらのレビューも追って掲載していきたいと思います。


さて、今週放送分の「復活編」ですが、なんだかストーリーがかなり違う気がするのと、主人公がロボットに恋する理由付けの説得力がないよ~、という点は置いておくとして、「主人公の目から見たときだけ、回りの人間が怪物に見えて、チヒロという名のロボットだけが美しい女性に見える」という特殊な心理描写がこのお話の見せ場だと思うので、アニメならではの表現技法で頑張って欲しいところです。海藻の固まりみたいなのがドシドシ歩いてきて「俺はお前の友達だ!」とか言われたら誰でもびっくりしますよね。その辺の不気味さだけはそれなりに出ていたかな、と思いました。
登場人物の主観によって身の回りの世界が違って見える、という手法は他の作品でも結構使われていますが、最近ビッグコミック・スピリッツに連載している山本英夫の「ホムンクルス」という漫画が一番これに近いような気がします。この漫画でも、一種の超能力のような力を持った主人公が、心にトラウマを持った人を見ると、その人の深層心理がビジョンとしてそのまま目に見えてしまう、という漫画ならではの表現に挑戦していて興味深いです。「愛しのローズマリー」という映画ともちょっと似ていますね。
風のまにまに号
山本英夫「ホムンクルス」1巻
「火の鳥全巻セット」朝日ソノラマ

コメントする