ヒバクシャ 世界の終わりに

movie_hibakusha.jpg先日行ってきた地球環境映像祭でアースビジョン大賞に選ばれた作品です。この映画は全国で順次上映が決まっていて、3/20からは渋谷のユーロスペースで公開されます。興味をお持ちの方は是非足を運んでみてください。
この映画を観終わったら、「世界の終わりに」といういささか大げさなサブタイトルが、誇張でも何でもなく、事実のありのままの表現だということを誰もが納得すると思います。とりあえず、それ以外に言うべき言葉が見つからず、呆然と立ち尽くしてしまう。それだけのパワーを持った映画でした。
映画の内容は、白血病で絶望のうちに幼い命を落としてしまったイラクの一人の少女の話から始まって、イラク→アメリカ→日本と、国や背景の全く異なる人々にスポットを当てながらも、皆「ヒバクシャ」という共通の苦しみを背負って、社会の底辺で戦い続けている現実を淡々と描いていきます。

イラクに被爆者がいるのはまあ分かるとしても、アメリカに被爆者がいるの!?と驚かれる人が多いと思いますが、私もこの映画を観るまで全然知りませんでした。その他にもビックリするような発見がいっぱいの映画なので、まずはそこに描かれている事実だけを雑然と箇条書きにしてみます。

  • イラクでは、湾岸戦争~イラク戦争の間にアメリカ軍が大量に撃ち落とした「劣化ウラン弾」の影響で、大くの子供や大人たちが白血病や癌に苦しみ命を落としている

  • 日本に落とされた原爆や、イラクに落とされた劣化ウラン弾は、アメリカのハンフォードにある核施設で製造され、今もなお大量の核兵器を生み出している

  • アメリカのハンフォード周辺では、長期間に渡って放射能が漏れ出ていたばかりか、実験として故意に放射能を放出していたこともあり、多くの近隣住民が癌や甲状腺障害で苦しんでいる

  • アメリカのハンフォード一帯は、日本を最大のマーケットとする、世界有数の農作物生産地帯である
まず基礎知識として、ご存知の方も多いと思いますが、劣化ウラン弾について説明しておくと、劣化ウラン弾とはミサイルの弾頭に核廃棄物である劣化ウランを埋め込んだもので、着弾と同時に周囲に放射性物質が飛散して永続的な効果を及ぼします。「核」そのものではなく、再利用されたごく微量な核物質だから、これは「核兵器」ではないよ、という巧みな言い逃れで大量に使用されているのですが、今もなお言葉を変えて「核戦争」が行われているのだ、と認識するべきでしょう。バグダットを攻撃したときのように、特定の軍事施設や独裁者を狙い撃ちできる技術がありながら、どうしてこういう兵器を使わなければならないのか、私にはいまいちよく分かりません。
アメリカのハンフォードで農業を営むトム・ベイリーさんは、政府の運営する核施設が近隣に放射能をまき散らしている事実を知り、仲間を募っては政府を相手取って裁判を戦い続けているのですが、政府側は「放射能と住民の病気に困果関係はない」として責任を認めません。まるでジュリア・ロバーツの「エリン・ブロコビッチ」みたいなお話ですが、状況はより深刻で救いがありません。彼が「死のマイル」と呼ぶ、街の1マイル四方の住民が次々と病で苦しみ姿を消してしまった、という区画の話も「デッドコースター」という映画そのまんまですが、こちらは比喩でも何でもない現実のお話なのです。
一方で、同じくハンフォードで農業を営む彼の弟は、俺は放射能が漏れていようが全く気にしない、俺の作った世界一のポテトを日本の人たちが食べてくれることが俺の誇りだ、と言いながらマクドナルドのフライドポテトをほうばっています。そんなことを誇りにされても素直に喜んでいいものか、複雑な気分になってしまいます。それより、そのポテトやりんごは安全なのかな・・?
さらに恐いのは、そんなにたくさんの自国民が命を落としているにもかかわらず、地元の住民のほとんどが核兵器は絶対に必要なもの、先進的でカッコいいものだと思っていることです。こういう強力な「思い込み」「思い込ませ」が働いている限り、いくら弱き者が声をあげても状況を一変させるのはなかなか難しいような気がします。アメリカの場合、そこに強力なナショナリズムが絡んでくるのが特徴的だと思いました。
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この映画で取り上げられている、イラク・アメリカ・日本という3つの国の組み合わせは、政治的な視点から見るとお互いに、戦勝国-敗戦国、援助する国-される国、保護する国-される国・・・というように不思議な階層構造にあるのですが、その底辺で苦しんでいる被爆者の視点に立つと、彼らの立場や苦しみは全くの平等だということが分かります。彼らは皆、目に見えない権力者たちの犠牲になった被害者=ヒバクシャなのです。
最後に、日本で長年被爆者たちの治療を行い、自らもまた被爆者である医師の肥田舜太郎先生が、地道な分析の結果、過去に起こったチェルノブイリ原発事故や中国の核実験が、10年~20年後のスパンで確実に日本人の乳癌の発生率などに強い影響を与えていることを見出しました。この事実が何を意味しているのか?最初私も気づかなかったのですが、上映会場を出て家に帰る途中でふと思いあたりました。ここに込められているメッセージは、「この映画を観ている私たちもヒバクシャなんだ」ということなのです。この映画に出て来る人たちは、皆明らかに放射能汚染が原因で苦しんでいるのですが、被爆者として国に認定されなければ何の保証も受けられない、逆に言えば巧みに「ヒバクシャ」であることが隠ぺいされ、何もなかった事にされてしまっているのが現代の被爆者問題の実態なのです。
アメリカのハンフォードで、大量の核廃棄物が居住地区に広がらないように、必死で処理作業を続けているスタッフの人のセリフが忘れられません。「もうどうやってこれを防げるか、というレベルの話ではない。終わりまであとどれだけ時間があるのか?それだけが問題だ。」

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Selfpit セルフピット -
ヒバクシャ
(2004年8月13日 19:15)

ゆっくり全国行脚中のようです。 お近くで上映がある際には、ぜひ足を運んでみては 続きを読む

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多摩川のほとりでのんびり暮らす3人家族の日常と果てなき好奇心を綴ったブログです。

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